第1回:露出計とカラーメーター ─ 役割の違いと現場に不可欠な理由

撮影現場は、監督、カメラマン、照明技師、DIT(デジタル・イメージング・テクニシャン)など、数多くのプロフェッショナルが関わる共同作業の場です。
その現場で欠かせないのが、光と色を「数値」で共有すること。
本連載では、全6回にわたり、露出計・カラーメーターを軸に、最新の撮影現場でどのように“数値化”が活用されているのかを掘り下げていきます。
第1回となる本稿では、SEKONICの2大ツール──露出計とカラーメーターの役割の違いと、その存在が今なおプロフェッショナルに支持され続ける理由を解説します。
◾️光と色を「数値」で扱う意味

カメラのデジタル化や照明機材のLED化が進むなか、現場では“目視の判断”に頼る場面が増えてはいないでしょうか。
「もう少し明るく」「もう少し青く」といった言葉は、人によって解釈が異なります。
しかし、「被写体の露出をF4.0に」「色温度を5600Kに」という数値であれば、誰が測っても同じ結果を得ることができます。
つまり、光と色を数値化することは、『チーム全員が同じゴールを共有するための“共通言語”』をつくることにほかなりません。
また、数値を記録しておけば、別の日の撮影や再撮影でも同じ光を再現できます。
この「再現性」と「確実性」こそが、プロの現場で露出計やカラーメーターが今も必要とされる理由です。
◾️露出計とカラーメーター

◾️露出計 ~ 光の「量」を測る~
露出計は、被写体に当たる光の「量」を数値化する道具です。
カメラの設定(F値、シャッタースピード、ISO)を導き出すだけでなく、「明暗比(光比)」を管理し、画のトーンをデザインする役割も担います。
さらに、監督やカメラマン、照明部が最終的な仕上がりを共有するための“共通言語”としても機能します。
例えば、照明セットに対して監督から「目視では暗すぎる気がするが大丈夫か?」といった意見が出た場合でも、実際の数値を測れば仕上がりに問題がないことをチーム全体で確認できるのです。
代表的なSEKONIC製品:
<スタジオデラックスⅢL-398A>

電池不要のアナログ式露出計。露出の組み合わせが一目で確認でき、映画撮影に便利なシネコマ数目盛も搭載。長年にわたり多くのクリエイターに愛されてきた信頼のモデル。
<ライトマスタープロ L-478D>

小型ながらタッチパネル液晶を搭載し、直感的に露出を選択できる露出計。写真や映像制作に幅広く対応し、別売りのビューファインダー5°を装着すればスポット測光(受光角度5°)も可能。
<スピードマスター L-858D>

セコニックのフラッグシップ露出計。受光角度1°のスポット測光を標準装備し、ファインダーを覗きながら数値を直感的に確認可能。幅広いフレームレートやシャッター角度も自由に設定でき、動画・映画撮影の露出測定はもちろん、HSS(ハイスピードシンクロ)測定など、プロフェッショナルの要求に応える多彩な機能。映画やCMの現場で定番の露出計。
露出計の強みは「カメラに映っていない光」まで把握できる点。ヒストグラムや波形では見えない情報を、数値で管理できるのです。
◾️カラーメーター ~光の「質」を測る~
LEDやHMIなど、多様な光源が入り混じる現場では、「色温度や光の偏差」を正確に揃えることが欠かせません。
実際、ひとつのメーカーの照明だけで現場が組まれることは稀です。
さらに近年では、フルカラーLED照明の登場によって表現の幅が大きく広がりました。
その一方で、雰囲気を演出するために標準的な色温度から大きく外すケースも増えています。
こうした場面で、光の特性を客観的なデータとして提示するのがカラーメーターの役割です。
<スペクトロメーターC-800>

色温度だけでなく、CRI(演色評価数)、TLCI(テレビ照明一貫性指数)、SSI(スペクトル類似性指数)などにも対応。
複数の照明を組み合わせても、微妙な色ズレを補正し、意図した色空間を再現できる。
肉眼では同じ色に見えても、カメラを通すと色が転んでしまうーーその差を数字で可視化してくれるのがカラーメーターです。
◾️ダイナミックレンジの進化と“測る理由”

最新のデジタルカメラは、15ストップ以上のダイナミックレンジを備えています。
「広DRだから露出計は不要では?」と思われがちですが、むしろ逆です。
広いDRを活かすには、どこにハイライトを置き、どこにシャドウを残すかという設計が欠かせません。
露出計とカラーメーターは、その設計を数値で裏付けるための必須ツールなのです。

次回予告>>>
次回は、「フィルム撮影に学ぶ、SEKONICで作る映像の精度」 ~au三太郎の現場に密着~
現代では数少ない、フィルム撮影の現場「au三太郎のCM」現場に密着取材をし、フィルム撮影における露出とカラーの作り方をお届けします。
ぜひそちらもご覧ください。